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『アイドルマスター』765プロオールスターズ全コミカライズ作品レビュー!

『アイドルマスター』(通称:『アイマス』)というゲームをご存知でしょうか?

プロデューサーとなってアイドルをプロデュースし、トップを目指していく作品です。

私はこのゲームが好きすぎてそろそろやばいですが、今回は初代『アイドルマスター』のアイドルたち、765プロオールスターズ(以下:765プロAS)のアンソロジーを除く全コミカライズ作品の紹介をしようと思います。というか、します!

※以下、作品名に併記する作家先生の名前は敬称略。

『アイドルマスター』作:稍日向

記念すべき最初のコミカライズのコミックス刊行作品。まだ家庭用ゲームが出るより前、アーケード版の稼働時の作品で、IP黎明期だったこともあり、各アイドル間の呼称など現在とは異なる設定もあります。

ストーリーとしては、事務所の経営状況的に「10人のうち、1人しかデビューできない」と言われ、「デビューの枠を争い、アピール合戦」するという、のちのシリーズでは見かけない展開が軸です。

伊織と真の対立のような特定の組み合わせの対立は他の作品でも見られますが、全員が利害によってぶつかるのは珍しいですね。

珍しいと言えば、雪歩の髪がベタ(黒一色)の作品も珍しいかも。

また、西園寺美神と彼女率いる西園寺プロダクションの小早川瑞樹がゲストキャラクター。瑞樹は高飛車なキャラクターですが、むしろお人よしな部分も見える好人物です。

西園寺美神は春香がアイドルになるきっかけの人物。そして意外な過去を持っています。漫画オリジナルキャラたちも、ゲームに逆輸入されてほしいなあ。

設定が固まり切る前の『アイドルマスター』を味わうことができる作品ですので、機会があればご一読をば。

『アイドルマスターシリーズぷろとん4コマ集2005-2015』作:ぷろとん

アーケード版時代の公式ホームページで掲載されていたいわば最古の漫画
ただ、電子書籍として、まとまって販売されるようになったのはごく最近です。

本作では、プロデューサーの顔にPの文字が描かれており、
のちのPヘッドの原型ともいえるでしょう。全体的にゆるふわな雰囲気で、牧歌的です。

春香はいつも何もないところで転ぶのに、何かあるところでは転ばないといった設定や、アイドルと真が一緒にいたらデートだと報道されてしまうなど、現在当たり前に認知されているネタなども「ここが発祥だったのか!」とか「この時期にもうあったのか!」という視点で見れて楽しいです。

また本作は765プロASだけでなく、ライバル事務所961プロのユニットジュピターを主役に据えた4コマシリーズも収録されています。

ゲームでは圧倒的実力を持つライバルとして有名な彼らですが、本作ではむしろご町内の人気者お兄ちゃんたちとしてほのぼのする活動が見られます。

後に女性向けゲームの『アイドルマスター SideM』がリリースされますが、ジュピターはそちらでもお馴染みですね。というわけで、『アイドルマスター SideM』のプロデューサーも要チェックな作品です!

『アイドルマスター -Your Mess@ge-』作:草壁レイ

バンダイナムコエンターテインメントのフリーペーパー&WebサイトのSide/BNで連載されていた作品。タイミング的には、初めての家庭用(Xbox360版)の時期です。

タイトルのユアメッセージとは、プロデューサーからのメールを意味していると思われます。

そのため本作は、プロデューサーが直接には登場せず、メールでのやりとりによってアイドルを導いていくという異色作となっています。

とは言っても、アーケード版ではプロデューサーの携帯に直接メールが届くシステムだったこともあって、メールでのやりとりというのは『アイドルマスター』らしさでもあります。ゲームとは逆に、プロデューサーが送る側というのが面白い点ですね。

この作品ではプロデューサーが登場しないぶん、アイドル同士のやりとりや、心情の描写が丁寧で、彼女たちの魅力を深く掘り下げているのが特色です。

この作品が公開されたころは、ゲームにおいてアイドルと一対一でやりとりする形式でした。それは複数アイドルによるユニットを組んでも同じで、コミュニケーション対象を都度切り替えて相対するシステムです。

そのため、アイドルたち同士の絡みが見られる機会があまりなく、それぞれの関係性がわかるという意味でも本作の意義は非常に大きいものでした。今となってはおなじみの、やよいと伊織のコンビ(通称:やよいおり)などを印象付けたのも本作の影響が強いと言えるでしょう。

そういったキャラ同士の関係性を知るという意味でも、ここからゲームに入っていく入門書にもオススメの作品です。

『アイドルマスター relations』作:上田夢人

『アイドルマスター』のコミカライズの中でも非常に高い知名度を持つ作品。

お話の主軸は、プロデューサーの男性と新人アイドルの美希。このプロデューサーはかつて、担当アイドルの千早の才能が自身のプロデュース能力を超えたと感じ、自ら身を引いたという過去があります。

このあたり、アーケード版で尋常ではないプロデュース難易度を誇った千早を担当したプロデューサーたちには共感できる部分でもありますね。

さて、そんな過去に引きずられている彼ですが、美希の明るさと的確に核心を突く天真爛漫さによって、プロデューサーとアイドルにとってもっとも大事なことを思い出し、再び千早とも向き合っていきます。

いわゆる覚醒美希が見られる数少ないコミカライズとしても、稀有な一作と言えるでしょう。

また、ゲームでは名前だけが登場する最強クラスのライバルユニット「魔王エンジェル」にビジュアルが初めてついた作品でもあります。

特にリーダーの東豪寺麗華は有名で、夢見て入ったアイドル界の現状に失望し、妨害行為や審査員の買収など手段を選ばぬようになり、そのアンフェアな手を使ってトップになることで、アイドルという存在が無価値であると証明しようとするという、いわばダークヒーロー的ヒロインです。しかし、その純粋すぎたがゆえの屈折とプライドが非常に魅力的でもあります。

魔王エンジェル、ゲームにも逆輸入されないかなあ。立ち絵のあるキャラとして。

それからゲームで名前だけあったキャラといえば佐野美心。原作ではオーディションに登場する普通のライバルNPCなのですが、最高ランクで登場した場合、最強のNPCとなる特徴があり、それを取り入れて、圧倒的な才能を持ちながら、表舞台からは去り、老人ホームなどで歌っている、というキャラクターとして解釈されています。

このように、原作愛にあふれた作品ですので、ゲーム版が好きな人も、はじめて『アイマス』に触れる人にもオススメできます。

『ぷちます! -PETIT IDOLM@STER-』作:明音

765プロのアイドルたちと、彼女たちによく似た謎の生き物「ぷちどる」による、時にゆるく、時にドタバタな日常を描く作品。

本作は本作で極めて特殊な成立過程をしており、もとは明音先生の個人サイトで掲載されていた作品公式にスピンオフとして認可され、雑誌連載、のちにアニメ化までしたものです。また、現在も連載中の長寿人気作というのも付け加えておきます。

本作は、「ぷちどる」たちの可愛らしさが特徴的なのですが、基本的に「ぷちどる」たちはしゃべれません。「うっうー」とか「くっ」とか「はるかっか!」とか鳴きます。

ぶっとんでるように見えるかもしれませんが、この辺りは、長くアイドル達をプロデュースしてきたプロデューサーならお馴染みの単語なので問題ありません。……問題ないよね?

また、「ぷちどる」たちの能力もフリーダムで、迷子になるのが特徴の三浦あずさによく似た「ぷちどる」みうらさんは、ワープ能力がありますし、春香によく似たはるかさん水に濡れると増え、深夜に食事を与えると狂暴化します。これグレム……いやなんでもないです。

個人的には、ぷちどるたちのもちもちほっぺの描写が凄く好きです。はるかさんが窓ガラスにほっぺくっつけて遊んでたりして、すごく微笑ましい……!

『アイドルマスター ブレイク!』作:藤真拓哉

ブレイクの名の通り、挑戦的な試みも多く、ある意味、もっとも異質なコミカライズで、これまでのファン層とは異なる児童~少年をターゲットとする、掲載誌に合わせたノリの作品になっています。

PSPの『アイドルマスターSP』の漫画化ですが、SPからの新キャラ・貴音や響ら961プロが登場する以外は、ほぼほぼオリジナル展開。

主人公は高木裕太郎という16歳の少年です。高木という名字から、プロデューサーのみなさんにはティンと来るかと思いますが、765プロの社長(現・会長)である高木順一朗を祖父として持ちます。ちなみに普通に高木社長の顔が出ているという点でも、この作品の特異性がわかるかもしれません(他作品では黒塗りのシルエットが基本)。

さて、この高木裕太郎少年が、多額の借金が発覚した765プロの臨時社長兼プロデューサーとなり、同年代のアイドル達とドタバタな日々を送っていくことになります。

他のコミカライズにない点として、ラブコメ漫画の文法がよく見かけられる点です。藤真先生はのちに『ネギま!?』のスピンオフを手掛けられますが、イメージとしてはそれに近いですね。

ラブコメ要素があることで他のコミカライズにはないプロデューサーとのスキャンダル疑惑が出る点が特徴的。意外と見かけないので新鮮です。

『アイドルマスター2 Colorful Days』作:しゅー

こちらは『アイドルマスター2』の時期の作品。本作を含めた『アイドルマスター2』のコミカライズ全3本が同時に開始されたのが特筆すべき点です。

3本それぞれが特色を持つのですが、本作の特徴は「プロデューサーが来る前の話」ということ。

『アイドルマスター2』は、「(前作より)プロデューサーの着任が1年遅かったら?」という発想のもと、世界観が作られており、そのプロデューサー不在の期間を描いた作品と言えます。

そのため、アイドル達が健気にがんばる姿が印象的で、

「こんないい子たち、なんとしてもワシが大成させてあげねばならぬ」

と思うことうけあい!

『アイドルマスター』のコミカライズでは、そのキャラの多さから、特定のキャラにスポットが当たってしまい、全員までそれが回らないこともあるのですが、本作では一人一人丁寧に描かれています。

また、ライバルユニットとして「プチ☆プラネット」が登場し、そのリーダー天王寺うららとの対決や交流も魅力です。2のコミカライズですが、彼女たちは961プロではないのでその辺りも本作ならでは。彼女らもゲームに出ないかな……。

とにかく絵柄のかわいらしさが素晴らしく、特に響の水着回のけしからなさ快活さが最高なのでぜひお手に取ってみてください。

『アイドルマスター2 The world is all one!!』作:祐佑

通称、ざわわん。本作も『アイドルマスター2』のコミカライズ3本のうちの一つ。

春香、雪歩、響というそれまであまり見かけなかったユニットを軸にしており、何より特徴的なのが、主人公であるプロデューサーがライバル事務所のスパイというショッキングな設定であることです。

もうこの設定の時点で、めちゃくちゃ気になりませんか?

主人公は、板挟みの状況の中、アイドルたちをプロデュースしていくことになります。しかし、いつまでもそんな二重生活が続くわけもなく――。

このドキドキハラハラのストーリーがアニメーター経験のある祐佑先生の作画力と相まって好評を博し、全3巻予定が5巻に延長されたほどです。

プロデューサーサイドの掘り下げだけが魅力なのではなく、ゲームのメインヒロインである春香や、明朗快活な響がイニシアチブを取りそうなところを、内向的に思われた雪歩こそが大黒柱という、意外に思えて納得できるユニット・SprouTが愛しくてたまらない。961プロが次々仕掛けてくる卑怯な罠を、たくましく乗り越えていく彼女たちの成長は涙なしには見れません。

また、伊織、あずさ、亜美を律子がプロデュースするユニット・竜宮小町も深く掘り下げられており、『アイドルマスター2』ではプロデュースできなくなった彼女たちの活躍が胸を打ちます。

特に、「頑張れ、私の竜宮小町」は『アイドルマスター』史上に残る大名言だと思います。だからアニメ化してください……!!

『アイドルマスター2 眠り姫』作:茜虎徹

本作も『アイドルマスター2』のコミカライズの1本。この2のコミカライズは3本とも、『アイドルマスター』の曲をタイトルにしており、本作はその名の通り、楽曲「眠り姫」と、それを歌う千早を主題に据えています。

千早をプロデュースという点では『アイドルマスター relations』に通じるものがありますが、そちらのプロデューサーとは対照的に本作の主人公であるプロデューサーは、そのバイタリティでガンガン突き進んでいきます。

千早は千早で繊細なキャラクターではあるのですが、本作ではドジと言いますか明るい面も見せます。ただ、やはり彼女はその真面目さから思考の沼にはまってしまい、いわば茨にとらわれた眠り姫といえるほど自縄自縛になってしまうのですが、だからこそ、そこから解き放たれた時の千早は無敵です。

短くまとまっている一方、千早の魅力がぎっしり詰まっており、千早ファンはもちろん、そうではない人にも読んでほしい一冊です。

『THE IDOLM@STER』(脚本)高橋龍也/(画)まな

本作は立ち位置が特殊で……。と、なんだかそういう話ばかりしてる気がしますが、特殊な作品が多いのが『アイドルマスター』の特徴なのでそういうものだと思ってください。そんな本作は「原作ゲームのアニメ化作品のコミカライズ」です。

そのため、アニメでも多くの回を担当されていた脚本家の高橋龍也さんが本作でも筆を執っています。また、まな先生の絵はアニメを完全再現していると言ってよく、アニメと地続きのエピソードを楽しむことができます。

物語の時期的にはアニメで山場を乗り越え、アイドルたちが順調に活動を始めたあたりからスタートします。アイドル13人の一人一人にスポット当てながら丁寧に描いており、アイドルの魅力を再発見できる作品です。

これまでに紹介したコミカライズ作品は基本的に売れない時期に頑張るさまを描く作品であり、アイドル活動が軌道に乗ってからの時期を描いているのが最大の特徴といえるでしょう。

もちろん、アニメを見ていなくても単体として楽しめる内容になっていますので、万人にオススメできる漫画です。

なんというか、すごく言葉にしづらいんですけど、根底にある作り手としての優しさを感じることができて、特にそれを感じられるのが、雪歩とファン集団である掘削組とのエピソードなんですが、ぜひ読んでみてほしいなと思います。

『朝焼けは黄金色 THE IDOLM@STER』(脚本)高橋龍也/(画)まな

前述の『THE IDOLM@STER』と同じ布陣で描かれる音無小鳥(小鳥さん)の高校時代のエピソード

小鳥さんといえば、ゲームのナビゲーター的役割を担うキャラクターであるのですが、アイドルではありません765プロ事務員です。

しかし、圧倒的な歌唱力を持ち、その持ち歌は全部名曲(余談ですが、私は「空」を聞くだけで泣いてしまう生物です)。

事務員のはずの彼女が、なぜこれほどまでの歌唱力を持つのか、どうやら過去にアイドル活動をしていたのではと思わせる点が、これまでにゲームやアニメなどで少しずつ示唆されており、ついにその秘密が描かれたのが本作です。

そういう秘密って、結局最後まで明かされなかったりするものと思うんですが、本作ではちゃんと見せてくれます

基本的に黒塗りシルエットで顔が描かれることのなかった高木社長や黒井社長の若かりし姿がはっきりと描かれています。これは、全部の秘密を描き切るという意志の表れではないでしょうか。

小鳥さんを描くことは、高木順一朗や黒井崇男を描くことでもあり、『アイドルマスター』という作品全体に関わるバックボーンを全て描くことでもあります。そのため、『アイドルマスターディアリースターズ』の重要キャラクターであり、伝説のアイドル・日高舞についての言及もありますし、同作の石川社長らしきキャラも登場しています。

現在も『Comic REX』で連載中で、古くから存在を示唆されていた小鳥さんの母・音無琴美について、ついにその詳細が明らかとなります。一方、黒井崇男プロデュースのブラックニードルなるユニットも登場し、一気に物語は進んでいます。そして小鳥さんはというと、学園祭でのライブに誘われ……と、いよいよ次の展開に突入する盛り上がりを見せています。これはもう雑誌を買って追いかけるしかない!

基本的にはどのコミカライズも、原作を知らなくても読んでほしいのですが、本作に限っては感動が倍増するため、ぜひ色んな『アイドルマスター』に触れてから、手に取ってみるのをオススメします。

まとめ

というわけで一気に紹介してきた、『アイドルマスター』のコミカライズ作品レビューはいかがだったでしょうか?

今後、『アイドルマスター』シリーズの別ライン、876プロ、346プロ、315プロ、961プロ(283プロははじまり次第)のコミカライズ作品も紹介したいなーと、思っています。

……とか言ってたら、346プロが怒涛の勢いで連載開始したりして。それもまた楽しからずや。現プロデューサーの全員と、将来のプロデューサー全員にコミカライズが届くように頑張ってレビューします!

乞うご期待ですよ! 乞うご期待!

WRITTEN by さわむら

※「マンガ新聞」に掲載されていたレビューを転載
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