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「この問題が解けたらイイことしてあげる」東大vs偏差値Gの恋の駆け引きに大草原不可避『一線こせないカテキョと生徒』

もんだいが とけたら イイことを してやろう

「もし わしの みかたになれば せかいの はんぶんを おまえにやろう。」

かの有名なゲーム『ドラゴンクエスト』で、竜王は勇者にこう問いかけます。

「どうじゃ? わしの みかたに なるか?」

>はい
 いいえ

竜王はラスボス、つまり平和をもたらすため最後にたたかう敵であり、竜王を打倒する事がまさに勇者の旅を続けてきたモチベーションなのですが、どういうわけか”はい”を選んだ勇者の数は少なくないようです。

このフレーズ”世界の半分”は、同ゲーム内に出てくる「ゆうべは おたのしみでしたね。」と同様一度見るに忘れられない名台詞となり、オマージュやパロディとしてさまざまな系譜を生みました。

少し挙例するに、ドラゴンクエストの派生である「ドラゴンクエストビルダーズ アレフガルドを復活せよ」は”はい”と答えたあとの世界を舞台にしていますし、もう少しさかのぼれば、漫画『ドラゴンクエスト ダイの大冒険』でも、”魔王”ハドラーが勇者アバンに「オレの部下になれ!そうすれば世界の半分を与えてやるぞ…!!」と言うシーンがあります。長い時を経て再度アニメとなり、近々(レビューの公開日時によっては今まさに)放送の『ドラゴンクエスト ダイの大冒険』、すごい楽しみです。

ちなみに、「ゆうべは おたのしみでしたね。」もオンラインゲーム「ドラゴンクエストX いばらの巫女と滅びの神 オンライン」を題材にした漫画『ゆうべはお楽しみでしたね』となり、実写化もされるほどです。gelato pique(ジェラートピケ)っぽい部屋着の本田翼さんは、まさに極大消滅呪文メドローア級の威力でした。

さて、いつも通り枕が大きくなりましたが、”世界の半分”について雑にそろばんを弾くと、現在の世界人口が77億人なので38億5000万人を頂戴できる、ということになります。規模が大きすぎてよくわからないので縮小すると、こうすれば魅力的なご褒美に聞こえてくる気がします。

「おすしを おごりで たべさせてやろう」

「たかめの アマギフを やろう」

「フォロワーを すごく ふやしてやろう」

思わず”はい”と、首を縦に振りたくなります。食欲やお金、承認欲求を満たしてくれるご褒美は、なんとも魅力的に響くのではないでしょうか。

ほかには、そうたとえば、恋愛への欲求、生存本能として書くなら性欲も、古来より機能し続けているご褒美と言えます。

「この問題が解けたらイイことしてあげる…」

こう年上のすてきなひとに言われたら、どうでしょうか。

『一線こせないカテキョと生徒』は、家庭教師からのご褒美をモチベーションに勉学へ勤しむ男子高校生と、なかなかご褒美へ至ってくれずとも飽くなき情熱でいざない続ける家庭教師によるギャグ強めのラブコメ漫画です。

報酬系の 法則が 乱れる!

こういったご褒美に対して脳が活性化されるのは、(脳内)報酬系(Reward System)という難しい名前の神経回路によるものと聞きます。

危険や苦難を乗り越え何かを得ることで欲求が満たされると、快楽が生じるよう脳に仕組まれている回路です。ご褒美に対して頑張れるのは、この報酬系が機能しているからだそうです。

勉強に努めテストで好成績を収めたり、仕事で予想以上の成果が出たり、ゲーム『SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE』で何度も死にながらようやく敵を倒したり、先生と生徒という越えてはいけない一線を飛び越え恋を成就させたりと、これらはすべて報酬、つまりご褒美という快楽に向けてモチベーションがはたらいているわけです。

『一線こせないカテキョと生徒』は、お互い好意を寄せている女子大生・ほのか先生と男子高校生・高木くんが、神聖な授業中であるにもかかわらずご褒美と称してどうにかこうにか接近できないかと画策する漫画なのですが、ものの見事に歯車が合いません。

そしてその歯車の乱れ方が、想像を越えて面白いのです。

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『一線こせないカテキョと生徒』(地球のお魚ぽんちゃん/ナンバーナイン)1巻より引用

短めのデニムスカートを履いた女性の大腿部に解答用紙が置かれ、「記入して…?」と言われたら、高校生男子の血潮たるもの、くんずほぐれつどうにかなりそうなのですが、タイトルにある通り一線こせません。それどころか、一線に対してありえないベクトルに進むのです。そのベクトルの向きと大きさに、笑わずにいられません。

上のコマに関しては、高木くんの飛びかかり方もさることながら、それをさあ来いと待機しているほのか先生のチェアを用いた綺麗なリバースプッシュアップ(逆腕立て伏せ)がたまりません。はりきりが伝わってきます。

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『一線こせないカテキョと生徒』(地球のお魚ぽんちゃん/ナンバーナイン)1巻より引用

ほのか先生による恋のそそのかしは手を変え品を変え高木くんをドキドキさせるのですが、負けじと高木くんも男子高校生らしくド直球なアプローチでほのか先生にご褒美をねだります。どうでもいい話をひとつさせていただくと、竹谷は大学生時代塾の講師をしていたのですが、その数年後、満員電車内で偶然再会した元教え子(女子高生)に「ねえ、番号教えて?」と耳元で囁かれたのを思い出しました。LINEのない時代でした。

高木くんもほのか先生も、はたから見れば両想いも両想いなのですが、”家庭教師と生徒”という世間から承服されがたい関係性も手伝いつつ、また双方ともに純粋すぎて距離を上手に詰められません。そして、高木くんの無限大な夢の溢れる頭脳により、ふたりのやりとりはいつも奇想天外四捨五入な様相を見せます。ほのか先生もナチュラルな魔性で誘っているわけではなく、”東大大学”ならではの勤勉さの果てにたどり着いた仮免魔女だからこそ、わりかしふんわりしていて、それがまたかわいくて面白いです。

笑ってしまうだけでなく、なんだか元気がもらえるほどに。

なかなか一線こせないふたりですが、気付けばどうかしばらく一線こさないでくれと願いつつ、ふたりの緩やかで激しい恋模様を応援したくなります。ご褒美を巡ってふたりが暴走特急するさまを、ずっとほほ笑ましく見ていたい!

お読みくださりありがとうございました!

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▽株式会社ミリアッシュはイラスト制作会社です▽

WRITTEN by 竹谷 彰人
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