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カースト下層の暗黒の民が読んで興奮した「令和版身分違いの恋」『スーパーベイビー』

陰キャと陽キャが出会い、惹かれ合ったら……。

最近「自粛警察」という言葉をあちらこちらで見かけますが、誰しも心になんらかの警察を飼っているのではないか、と竹谷は思います。

こと竹谷に関しては、まず「国語警察」を飼っています。

たとえば、「足元をすくう」という表現を見聞きする度「すくうのは足元じゃなくて足なのになあ」とモヤモヤします。

また、「陽キャ警察」でもあります。書いていて少し悲しくなりますが、竹谷は混じりっけなしの高純度陰キャなので、会う方々から陽キャ素粒子の放出を看取すると「陽キャだ!構えろ!」と無意味に怖がります。

ひとを二分割してもまったく詮なきことなのですが、そんなひねくれ竹谷からすると「黒ギャル」という存在は陽キャの最上位、言うなれば陽陽キャです。当然、日常生活でまったくお会いしない方々ですし、恋愛という観点では、想像だにしたことがありません。

しかし、もし縁あって出会い、互いに惹かれてしまったら……。

それが実際に起きてしまい、なんだかニヤけてしまう漫画が、丸顔めめ先生による『スーパーベイビー』です。

ふたりともかわいすぎるので、心から応援するしかない。

東京は町田に住む黒ギャルの「玉緒」は、ある日スーパーで働く青年「山田」と出会い、ときめきます。

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『スーパーベイビー』(丸顔めめ/芳文社)1巻より引用

行動力の塊である玉緒の貢献もあって、一気にふたりの距離は縮まっていきます。

漫画『ヒストリエ』で言う「文化がちが~~う!」状況だからこそ、互いが互いを大切に受け取るべく、あたふたしてる姿が本当に愛おしいです。

そんなふたりの無垢な感じを「かわいい」と思うのはもちろんのこと、双方ともに「根っからのいいヤツ」なので、読者は果たして「幸せになってくれ」と一心に願い、行く先を見届けんとページをめくっていくことになります。

そして、恋愛は往々にして、それぞれの過去に刺さったままの棘と、対峙しなければならない時があります。

陽キャの中に陰りが見えた時、陰キャはどうするのか。

玉緒はとにかく素直で、物事を何でもポジティブに受け取ります。何度でも言いますが、かわいいです。

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『スーパーベイビー』(丸顔めめ/芳文社)2巻より引用

物事を何でもポジティブに受け取るというのはなかなかできることではなく、ゆえに玉緒はたくさんひとから慕われ、また本人も山田を含めすべてのひとに全幅の愛情を注ぎます。

しかし、悪意に対しては、どうでしょうか。

悪意を悪意と認識できず、ポジティブに受け止めてしまったら、どうなるでしょうか。玉緒の素直さは、素直であるからこそ、天使が堕天するように、危うい面も持っているのだと思います。

そこから生じた棘に、山田はどう動くのか。陰キャは弱々しいと思われがちで、実際に気が小さい場合も多々ありますが、闇属性は闇に耐性があるのです。山田の奮闘する姿勢に、竹谷は「こういう男にならねば」と涙ながら感じ入ります。

「差」は「ハードル」。ゆえに時代を越えたカタルシスがある。

「恋に落ちてはいけない、と思ったら、それは恋の始まり」とどこかで聞いたことがあります。悲劇の古典である『ロミオとジュリエット』は、禁じられた恋だからこそ興味を惹き、中世に作られてから400年経つ今も不動の人気を誇ります。近代英国を舞台にした漫画だと、森薫先生の漫画『エマ』はまさに、上流階級と労働者階級という「身分違いの恋」を描いた傑作です。

竹谷の世代は、「士農工商という身分が明治に四民平等へと変わった」と教わりましたが、これはもう存在しない歴史らしく、そもそも日本では身分制度や上下関係はなかった、というのが現在の研究結果だそうです。

ですので、「身分違いの恋」はそのままの意味では日本だと成立しにくいかもしれませんが、噛み砕いて「貧富の、あるいは社会的な差」を含めれば、なんだか身近に感じられるのではないでしょうか。

そう考えていくと、「貧しい少女がその黄金の精神でもって富裕層の少年たちを屈服させていく」大人気漫画『花より男子』は、平成屈指の「身分違いの恋」なのだと思います。

あとは、なんでしょうか。竹谷の時代にはなかった概念ですが、スクールカーストも「身分」風と言って過言ではなさそうです。わざわざ顧みて当てはめるに、竹谷はもちろんカースト下層の暗黒の民で、すみっコぐらしを決め込んでいました。上層は当然、サッカー部や野球部、チア部や軽音部でしょうか。ほかには、なんだかキラキラと明るい黒ギャルたちも上層にいました。

黒ギャル……。黒ギャル!?

やっと、たどり着きました。そう、『スーパーベイビー』は、昨今当たり前に認知されつつあるスクールカースト的な「身分」を取り込んだからこそ、令和を生きる人々に刺さる漫画なのです。

ああ、続きが気になります。「身分違いの恋」とは言えいまは令和。どうか悲恋にならないでくれと祈りつつ、ふたりの応援を続けていく所存です。


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WRITTEN by 竹谷 彰人

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