組織の陰謀としがらみを、視線とパンとタバコでかわす洒脱な男の人生ドラマ『ACCA13区監察課』
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組織の陰謀としがらみを、視線とパンとタバコでかわす洒脱な男の人生ドラマ『ACCA13区監察課』

【レビュアー/竹谷彰人

竹谷は『ちはやふる』の聖地こと府中に生息しているのですが、先日、コンビニへ行こうと外へ出たら、このような看板が立っていました。

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ここらへんも使うんだなあと少し驚きつつ、このレビューが公開される頃は、まさに東京2020オリンピックの開催前後ではないかと思いながら書いています。

オリンピックは、ギリシャの神々のおわすオリンポス山に由来する言葉で、紀元前の神話と史実の定かならぬ時代に生まれた競技祭だそうです。戦争中でも俄然として休戦し、みんなで一箇所に集まって競い合っていたのですから、近代において平和の祭典と銘打ち復活を遂げたのも得心がいきます。

オリンピックや他スポーツの世界大会が盛り上がるのは、「国VS国」という至ってシンプルな構図が大きな要因を占めていると言って差し支えないでしょう。スポーツ漫画でも、部内のレギュラー争奪戦を経て学校同士の争う市大会、次いで県大会、果ては県代表が闘う全国大会と、そのハイ・ボルテージな熱狂度数は比例していくように思います。

そうして国のトップに座した者たちに続いて待ち受けるのは、他国のトップたちに挑む、という展開です。国をまたげば当然に、応援したくなる人々の分母はどんどこ増加していきます。

また、これも当然のことですが、どの国の歴史もすべて様々な人々の覚悟と判断のもと、現在まで繋がっています。300年も続いた江戸時代に幕を下ろしたのは、尊皇攘夷という主義を心に据え、内外に渡り戦い抜いた八百万の柱たちによるものです。その証拠、と申すには語弊があるかもしれませんが、幕末における乱や変の多さは、大学受験生に「世界史選択に切り替えよう」と乱を起こさせるほどです。

さて、乱を始めとする軍事的な色を伴った政治的決起を、カタカナではクーデターと書きます。もとはフランス語の”coup d'Etat”、英語なら”strike of state”、直訳するに「国(へ)の打撃」を意味します。

今回オススメする漫画『ACCA13区監察課』は、クーデターによって自治が認められた地区を文字通り”巡る”、各地区に生きる人々と組織に生きる人々の生き様を描いた漫画です。

王国100周年に際して進む、性急な監察

ACCAとは全13地区からなるドーワー王国の警察や消防、また医療等、各自治区のインフラを横断的に担う独立組織で、主人公であるジーン・オータスの所属する監察課は、各自治区のACCA支部がきちんと機能しているか監視することをその職務としています。

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『ACCA13区監察課』(オノ・ナツメ/スクウェア・エニックス)1巻より引用

ジーンは、なぜか受理されない異動願いとともに、その監察課の副課長を日々卒なく過ごしています。ACCAの信念や理想に燃える顔でもなく、不真面目とも見えかねない態度で淡々と仕事をこなす彼は、不思議と色々な人間から注目を集めています。

その仕事ぶりに猜疑ないし好奇の目をつけられたのか、ジーンはハード・デイズ・ナイトなタイトスケジュールで全自治区を巡回するよう偉い方々から言いつけられます。

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『ACCA13区監察課』(オノ・ナツメ/スクウェア・エニックス)1巻より引用

ジーンたちが生活するドーワー王国は、クーデターにより自治区制へと移行してから100年が経とうとしています。そして、現国王は99歳という高齢です。

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『ACCA13区監察課』(オノ・ナツメ/スクウェア・エニックス)1巻より引用

史実においても物語においても、長い在位に対して頭に浮かんでくる事柄は、次の国王、つまり王位の継承です。竹谷の愛するドラマタイトルから言葉を借りるなら、まさに「ゲーム・オブ・スローンズ」です。

しかし、ドーワー王国の次期国王に相応しい”血統”を持つ王子は、すでにいます。

ならなぜ、クーデター成立後100年、つまりACCAが創立されてから100年の時期に性急な視察を進める必要があるのか。

「巻き込まれ体質」と評されるジーンは、ACCA監察課の業務を遂行するうち、何にどう遭遇するのでしょうか。

物語を彩る、目とパンとタバコ

「口は是れ禍の門、舌は是れ身を斬るの刀なり」

という名言があります(漢詩の一節)。口は災いの元、としても知られています。そして、このようなことわざもあります。

「目は口ほどに物を言う」

つまり、口は禍であり目は口なので、目は禍である、という三段論法が成り立ちます。おそらく。

ジーンを含め、各人物は多くを語りません。しかし、それを代替するかのように、視線が随所を飛び交います。

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『ACCA13区監察課』(オノ・ナツメ/スクウェア・エニックス)1巻より引用

勇気は、大別するに敢為と平静に分けられる。そうどこかで読み聞きした覚えがあります。困難に臨んで行動することと、物事に動じず落ち着きのあることを指しているそうです。

ACCAの人々、ことさらジーンを見ていると、この平静という言葉が浮かびます。

動じず、表情に出ない。ゆえに、喋らなくてよいことを、喋らない。

だからこそ、視線が際立ちます。その不可視な線に乗せられているだろう、思惑、疑念、敵意、緊張といった感情を読み解きたくなるように。

また、そんなACCAを含めたドーワー王国の人々が、その目元と口元を緩ませる時があります。

そう、それはグルメです。

書く順番を間違えたようにシリアスめいた切り口から話を180度変えますが、ACCAに出てくる食べ物は、夜中に読むとやや後悔するほどすべておいしそうに描かれており、とりわけパンが最高です。

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『ACCA13区監察課』(オノ・ナツメ/スクウェア・エニックス)3巻より引用

きれいに陳列されたよりどりみどりな食パン郡から、「くるみを3枚!2センチで!」といった小粋な注文の仕方で買っているのですが、こういうお店は日本にもあるのでしょうか。もうすごく食べたいので、ご存知の方おりましたらぜひお教えください。端から端まで1枚ずつ買い、家でひとり竹谷夏のパン祭りを開催します。

竹谷はアイテムが印象的に描かれている漫画が大好きなのですが、食パンをここまで食べたいと焦がれるのは「天空の城ラピュタ」の”ラピュタパン”以来初めてだったため、特筆した次第です。

そしてもうひとつ、ACCAでものすごい存在感を放っているアイテムとしてタバコがあります。なにせ、主人公・ジーンは「もらいタバコのジーン」という異名を持っているほどです。

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『ACCA13区監察課』(オノ・ナツメ/スクウェア・エニックス)1巻より引用

「タバコくらい自分で買いなよ」とご不満の方もいるかと推察しますが、ACCAの世界でタバコは高級品であり、おいそれと手を出せない嗜好品なのです。タバコを吸わない竹谷にとってはどうと言うことのない事態ですが、愛煙家の方からすればあまり歓迎したくない世だと思います。

ですので、ジーンはもらったタバコをあちらこちらで「プカプカドラゴン」よろしく煙をくゆらしています、ガンガンですからに。

ではどうして、ジーンはタバコをもらえるのでしょうか。

ドーワー王国13区を回り、監察課の仕事を遂行していくジーンは、さまざまな視線から何を読み取り、どう反応し判断を下していくのか。

右手に食パン、左手にタバコで、ぜひ結末まで見届けていただきたいです。

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最近HDリマスター版の『聖剣伝説 レジェンド オブ マナ』をプレイ中なので、これだけ言わせてください。「したらな!!」

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