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【アニメ放送中!】手に汗握るサーカスのような展開と二百年に及ぶ歴史のからくりに舌を巻く!2019年の漫画始めは『からくりサーカス』にしよう!

※本記事は、「マンガ新聞」にて過去に掲載されたレビューを転載したものです。(編集部)

【レビュアー/竹谷彰人】

教育(education)とエンタメ(entertainment)を合わせた、エデュテイメントという言葉があります。

教育にエンタメを混ぜることで、より深く、より学びやすくしようという概念のようです。

何かに感動すると印象に残り、それを忘れません。

皆様にも、忘れられない体験があり、それが今の自分をかたち作っている、
と思うものが多かれ少なかれあるのではないでしょうか。

『ジョジョの奇妙な冒険』のスタンド名にもなったロックバンド「エアロスミス」や皆一度は弾丸を避けるマネをしただろう映画「マトリックス」で英語を学んだ私は、そのムーブメントにリアリーにアグリーです。

そんな竹谷が中高大と生きていく中、めちゃくちゃに感動して、その分めちゃくちゃに美学を学んだ漫画が、つまり勝手にエデュテイメントに浴した漫画があります。

藤田和日郎先生の『からくりサーカス』です。

変化を続ける三角関係の行き着く先

人間関係は、三角形ほどドラマを生むものはないと思います。

恋愛でも、主人公のライバルが同じ人に恋慕することは王道的展開として枚挙に暇がなく、前回レビューとして書かせていただいた『SKET DANCE』も、スケット団三人の絶妙なバランスが面白さに拍車をかけています。

その三角関係において、最高峰に大好きなのが『からくりサーカス』の主人公たちです。


承継した遺産のため危険な目に遭う、良い笑顔の少年・才賀勝(さいがまさる)。

少年を守るべく付き添う、笑うことができない女・しろがね。

そんな二人に巻き込まれる、他人を笑わせないと死に至る奇病に持っている男・加藤鳴海(かとうなるみ)。

三人は、少年を巡る難儀に立ち向かいながら、互いが互いに特別な感情を抱くようになっていきます。

そして、二百年前からの宿命が重くのしかかり、関係性が変化していきます。愛する者を憎み、守る者が守られる。上手くはまりかけていた歯車が軋んでいくことに、歯がゆい感覚を覚えます。

「三人は悪くないし、関係ないのに!」と思いたくなるのですが、追って語られる古い因縁に、まず衝撃を受けて、それから納得します。

「そうなるのも、仕方ないことか」と。

そうして気づけば、説得力のある二百年を描く『からくりサーカス』の構成に、賞賛を禁じ得なくなります。

三人がなんとか幸せを掴めることを祈りながら、「先が気になる」という一心で読み耽る。藤田和日郎先生の描くエンターテインメントの極致がここにはあります。

血に塗れながらも、笑うことの大変さと大切さ

笑顔の少年、笑えない女、笑わせないと死ぬ男。

それらに代表されるように、「笑うこと」は物語の底を常に流れています。

嘘の笑顔を作るひともいれば、笑いたくなくとも、笑わざるを得ないひともいます。その苛烈さは、藤田和日郎先生の描く暴力的な表現によって一層浮き彫りとなっていきます。

当時いたいけなティーンエージャーだった私は、描かれた血しぶきに驚き、しばらくそのコマから目を離せなかった記憶があります。

今からすれば、あそこまで暗く血塗れのお話は、初めて体験したものだったのだと思います。

だからこそ、とびきりの笑顔が出てきた時、感情が大きく揺さぶられます。

よほど笑えないほど苛酷な情況でも、登場人物たちは笑うのです。

やせ我慢に見えるかもしれません。

しかし私には、美学として映りました。すげえかっこいい。

たとえ逆風激しく波高い窮状にあっても、笑える人間でありたい。どんな環境下にあれど、笑うか笑わないかは自身の問題でしかない。そう思える人間になったのは、藤田和日郎先生の『からくりサーカス』があったからです。

水曜日の早朝、皿洗いのバイトで池袋へ向かうとき、電車の中で最終話を読みました。泣いて、そのあと少しだけ笑いました。なんてすばらしい作品なんだと思いました。また、通勤ラッシュの前でよかったと心から思いました。

エンターテインメントとしての面白さはもちろんのこと、生きる上での美学溢れる作品を描いてくださりありがとうございました。

感謝の言葉を、レビューの結びとさせてください。

『からくりサーカス』は2019年1月現在、完全版が毎月二冊ずつ発売されていますよ!
(アニメも放送中です!!)


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