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モブ(脇役)だって恋をしたい!『モブ子の恋』の「B面」とは?

誰だって自分の人生における主役は「自分」です。けれど皆、心の中では現実が必ずしも映画のようにドラマティックではない事を知っています。

現実の中で大成功する人もいますが、ほとんどの人は「一般大衆」という大枠の中で日々の暮らしを送っています。

本作の主人公、田中信子もその一人。地味で大人しくて目立つ事が苦手。物語で例えるなら、みんなの中心にいる主人公よりもすみっこの脇役でいる方が落ち着いてしまう女の子です。

スーパーの面接では名前を「モブ子」と呼び間違えられ、

脇役(モブ)かぁ 確かにそうかも

と納得してしまいます。

そんな彼女にも、気になる男性ができました。同じバイト仲間の青年、入江くんです。バイトを始めたばかりの頃に助けてもらった事があり、それ以来、彼の存在は心の中で少しずつ大きくなっています。

入江くんにはなんでもないことだったと思うけれど
私はずっとこの日のことを忘れられないでいる

入江くんを意識しながらも、1年経っても彼の連絡先すら聞き出せない信子さん。

本作は、そんな彼女が入江くんとの恋をゆっくりと叶えていくお話です。

……でも、私がこの漫画好きだな!って思ったのはここまでが「A面」だと分かったときです。※ええと……「A面」わかります?昔のカセットテープはA面とB面と言うのがあって、ひっくり返して使うんですよ!ストーリー構成にそれを使った『イニシエーション・ラブ』という映画もあります。

「B面」は、信子さんあこがれの男性、入江くん視点での物語です。

入江君は、てきぱきと仕事をこなすクールなメガネ男子なのですが、これってかなり「信子さん」補正のかかった、人物描写でした。実際の彼はボーっとしたところがあって、バイトの先輩にからかわれたりする人物。

入江くんもまた「モブ男」だったのです!

入江って田中さんの前だとしっかりしてんだね

バイトの先輩にそう言われて動揺する入江くん。クールに見える彼も、実は無意識に信子を気にしていて、さりげなくフォローを入れたりしていました。それは偶然などではなかった。

「モブ子」である信子にとって、入江くんは「特別」だったし、「モブ男」である入江くんにとって、信子さんは「特別」だったのです!

第2巻では彼らの初デートが描かれていますが、それぞれの視点から描かれる、お互いの描写がとても良い!

モブ(脇役)の二人が結ばれる事で生まれる「特別」な物語をぜひ読んでみてください。

WRITTEN by 新里 裕人

※「マンガ新聞」に掲載されていたレビューを転載

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