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『暁のヨナ』の草凪みずほ最強の感動転生漫画『NGライフ』

草凪みずほ先生の作品は読むものの感情の温度を一気に変えてしまう

緩やかな時間を感じる展開だと気を抜いて読んでいたら、次の瞬間には涙を流すことが我慢できないほど心を揺さぶられていたり、笑いを堪えられないようなシーンから一気にページをめくるのが恐ろしくなるような緊張を一瞬で読者に植え付ける。

なぜこんな事が草凪先生の漫画には起きるのか。それには色々な理由があるがそのひとつは間違いなく登場人物それぞれのバックグラウンドの情報量の多さゆえだろう。

しかもそれをストレスなく自然と読者に植え込んでしまうものだから、知らない間に全ての登場人物に感情移入した読者は、登場人物と一緒に感情を揺らしてしまう。

初期の作品からその傾向は見られた。しかし、それが強く出るようになってきたのは『NGライフ』の中盤からだろう。

大ヒット作『暁のヨナ』以前に描かれた号泣必至の超感動作『NGライフ』

660万部を超える大ヒット作であり、3度目の舞台化が今話題になっている『暁のヨナ』を読んで、草凪みずほ先生の名前を知っている方は多いと思うが『NGライフ』は未読の方もいるのではないだろうか?

『NGライフ』は簡単に説明すると……

前世の記憶が色濃く残っている主人公は現世で、前世の最愛の妻が男に転生していたり、男の頼れる親友が可愛い幼馴染の女の子に転生していたりする事に複雑な想いを抱えながら日常を過ごしていく

……という物語だ。

最初はギャグ要素の強いラブコメだったりするこの作品だが、第2巻あたりから少しずつ物語の厚みが増してゆく。

ここで描かれる過去とはポンペイという古代都市での生活なのだが、ポンペイと言えば、火山にその全てをのみ込まれ姿を消した悲しい歴史がある街だ。

そして、その火山にのみ込まれた瞬間を生きた人物達が、現代に転生して生きていく姿がこの『NGライフ』では描かれているのだ。

大切な誰かへのそれぞれの想いを抱えながら死んで行った過去。そして現在を生きるそれぞれの想い。

とても複雑な感情の交差がまずそこにある。しかし草凪先生は、全くその複雑さを感じさせることなく読者に理解させて、自然にそれぞれの登場人物に感情移入することに持っていく。

私も火山に飲み込まれるポンペイを描かれたエピソードでは、泣きすぎて漫画がボロボロになってしまったことを覚えている。

後にも先にも、涙でふやけて漫画が読めなくなって改めて買い直したのはこの『NGライフ』ただひと作品だ。

草凪先生の隠し味が詰まった「普通」の恋愛漫画『僕の小鳥さん』はやっぱり極上の作品である

電子のみであるが2つの草凪先生の読切作品が読める様になった。そのひとつ『僕の小鳥さん』。この作品は、他の草凪先生の作品と読み味が少し違っていて、なかなか面白いので紹介をしたい。

ある女性と男性の告白のドラマを切り取った本作。見所はこの2人の内面は見えている外面と全く違うというギャップの面白さだ。短編読切にも関わらず、読者が作品を読み返して2人の行動から性格を色々考えられる要素が散りばめられていたりするのだ。

というか、この作品だけで一晩語れるくらいひとコマひとコマの情報量が多い!

サッパリした内容で読み味もあっさりなのに気付きの要素が多い不思議な作品という感じで非常にオススメだ。100円ちょっと、とお値段もリーズナブルなので気になった方はぜひ一度読んでみて貰いたい。

WRITTEN by 栗俣 力也

※「マンガ新聞」に掲載されていたレビューを転載
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