人はなぜ、テロやカルトといった”怪しい団体”から抜け出せないのか『テロール教授の怪しい授業』
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人はなぜ、テロやカルトといった”怪しい団体”から抜け出せないのか『テロール教授の怪しい授業』

【レビュアー/ミヤザキユウ

Clubhouse、流行ってますね。

Clubhouseは「音声版のTwitter」と言われている、声で交流するSNSです。日本では1月に流行り始めてから1ヶ月足らずで50%以上の認知度を獲得するなど、爆発的な広がりを見せています。

ただしアプリ内での会話は記録が残らない、ルームという密室でおこなわれるという性質上、カルト団体やマルチ商法などの勧誘にも非常に使いやすいという指摘がされることもあります。

彼ら・彼女らもプロとしてやっているでしょうから、丸腰で遭遇してしまったらひとたまりもないかもしれません。明日は自分が勧誘する側にまわっているかも…気をつけないといけません。

Clubhouse楽しい…でもカルトやマルチは怖い…一体どうすれば?

そんなあなたに読んでほしいのが、『テロール教授の怪しい授業』です。

過激すぎる反テロリズム教育

本作の主人公はティム・ローレンツ氏。ドーナツが大好きな大学教授です。

物語の舞台は大学。季節は春。新入生への各種サークルやゼミの勧誘合戦の真っ只中です。教授も自身のゼミの相談会を開いています。

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『テロール教授の怪しい授業』(カルロ・ゼン/石田点/講談社)より引用

美味しいドーナツを食べながら、にこやかに進む相談会。教授とのちょっとした縁でそこに訪れた新入生の佐藤君は、楽しげな雰囲気と美人なTAさんに惹かれ、続くオリエンテーションにも参加し、ゼミの受講を決めました。

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『テロール教授の怪しい授業』(カルロ・ゼン/石田点/講談社)より引用

そして第一回ゼミの日。しかし、そこに集まった学生への教授の第一声はこれでした。

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『テロール教授の怪しい授業』(カルロ・ゼン/石田点/講談社)より引用

楽しいレクリエーション、耳ざわりのいい訓示、開放的⇨閉鎖的への段階的移行…つまり教授の勧誘手法はカルトの常套手段だったのでした。

これに引っかかった学生たちは、カルトやテロリズムに傾倒する"素質"があるテロリスト予備軍というわけです(暴論)。そして教授はそんな学生たちに対して、反テロリズム教育である自分の授業を受けることを強要します。

というわけで『テロール教授の怪しい授業』を読めば、このようにやや過激な実践を交えた教育が受けられます(ちなみにカリキュラム的には社会学ゼミということになっている)。もうClubhouse怖くないですね。

人はなぜ、"怪しい団体"から抜けられないのか

そもそもテロリズムもカルトも人がおこなうもの。そこに所属・実行する人がいるからこそ成立しています。

しかし、彼ら・彼女らが言っていることもやっていることも、社会通念に照らせば誤りであるのは明白です。上記の大学生たちのように、最初は騙されてしまうこともあるかもしれません。でもなぜ人は、そういう"怪しい団体"から抜けられないのでしょうか。

教授は春の大学キャンパスによくいる、怪しげなサークルの勧誘を例にその理由を解説してくれます。

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『テロール教授の怪しい授業』(カルロ・ゼン/石田点/講談社)より引用

つまり、彼らは人を増やすために勧誘活動をやらされているのではなく、孤立させられるために勧誘活動をさせられているのです。怪しい団体の勧誘活動をしてる人、普通に近づきたくないですよね。

怪しいものに限らず、誰もが自分と毛色の違う活動をしている友人と自然と疎遠になっていった経験があるはず。カルトなどはその極北ですから、勧誘やってたら周りから人がいなくなります。そして、孤立した人間は洗脳しやすい…。

という感じで本作では、数々のカルト集団やテロリストの手口が紹介されています。

読み手は「学べるエンタメ」として楽しめますが、これを発表している講談社さんや作者の方々は公安などに目をつけられないのか心配になるリアリティです(ちなみに作者のカルロ・ゼンさんによれば、講談社の社屋は秘密結社をやるのに最適な条件なんだとか)。

ただし、そんな指摘にも教授は返事を用意しています。

ではなぜテロリズムを学ぶのか!!
答えは単純!テロリズムとは普通とは「違う視点」で「極められた合理的手段」だからです!

おそらく皆さんには「異常」としか思えない連中ですし…まあ頭がおかしいと私も思いますが、彼等には彼等の理屈が、理念が、正義や大義すらあるかもしれませーん

だからこそ我々は連中が「合理的」と考えるに至るプロセスを「理解」することを通じ多くのことを学べます!

テロリストにならないための第一歩は、テロリストを知ること。そうした価値を本作は提供しています。

ま、でもだからと言って、この漫画を読んで「これでテロやカルトのことがわかったから自分は安心だ」って思っちゃうような人がきっと一番危ないんですよね。"わかったつもり”は何も知らないよりも危ない状態です。気をつけましょう。

それが『テロール教授の怪しい授業』。テロリスト、カルトメンバー、マルチ商法の末端予備軍の皆様におかれましては、必読書かと思います。


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