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リアルなNYで「私」が浮かび上がる近藤聡乃氏『ニューヨークで考え中』

※本記事は、「マンガ新聞」にて過去に掲載されたレビューを転載したものです。(編集部)

「ニューヨーク」と聞いて思い浮かぶのは、「金融街」「高層ビル」「お金持ちの住むところ」といった印象でしょうか。けして間違ってはいませんが、ニューヨークエリアは実は広い。近藤聡乃さんの『ニューヨークで考え中』(亜紀書房)は、メディアや観光ではうかがい知れないニューヨークの顔が見える傑作です。異国に長くいる人間がなにを考えるかも見えてきます。

銃撃戦もキラキラもないNY

突然ですがこのレビューをかいている本人は諸事情により4月からニューヨークに住むことになりました。「同じ人間が住んでいる地球上だからなんとかなるだろう」というぐらいの軽い気持ちでした。

問題はわたしがこの地域をほとんど知らないこと。私がメディアを通じて知っているニューヨークは、

 吉田秋生先生の『BANANA FISH』
 成田美名子先生の『CIPHER』
 羅川真里茂先生の『ニューヨーク・ニューヨーク』
 映画・ミュージカル『WEST SIDE STORY』
 映画・ミュージカル『42nd Street』

・・・つまり、「銃とやんちゃな少年の抗争とキラキラライフ」です。具体的な生活の想像がつきませんでした。

そんなとき、引っ越しを伝えた同じ漫画好き仲間から勧められたのが、近藤さんの『ニューヨークで考え中』です。

漫画家かつアニメーターとして活躍される近藤さんは、2008年にニューヨークに移住。アパートメントを引っ越しながら、その後10年以上生活されています。

『ニューヨークで考え中』はそんな近藤さんが身の回りの雑記を1回見開き1ページでまとめたもの。4月時点で単行本は2巻まで発売されており、続きは亜紀書房のウェブマガジン「あき地」で連載中です。

アパートの近くのベーグル屋さんの味わい(本当にベーグルはおいしい)、いろいろな国から来ている現地の友人とのさりげない会話で振り返る自分・・・多くの人が出入りするエネルギーにあふれる街の中で、地に足を付けて生活している人が何を思いながら生きているのかが伝わってきました。

近藤さんの目を通した普段着のニューヨークはそれまで読んだどんな作品にも描かれず、新鮮なもの。冬の厳しさ、コートの重要性、洗濯事情、意外な自然の多さなど、この漫画を通じて知ったことは多かったです。来る前に、ニューヨークで生活する心構えができました。

人は異国で自省する

どのエピソードにも、近藤さんがそれまでの日本とは違う生活に身を置きながら自分を振り返って考えられたことが込められています。それまでの日本での生活と何処が違うのか、そして何処が同じなのか。(例えば布団の上げ下ろしとベッドメークはどちらが大変か、など)。「自分ならどう感じるだろうか」と考えさせられました。

印象深かったのは女性陣の装いです。近藤さんの描写によると、ファンデーションなど肌のメークよりもアイメークなどポイントメークをしっかりするそう。さらにどんな年齢の女性でも下はレギンスだけをはいて外出しているとのこと。・・・これは実際ニューヨークに来てみて本当でした。ちょっとした聖地巡礼の気分です。

近藤さんによれば、移り住んできた人も徐々に現地のスタイルになじんでいくとのこと。自分がどうなるかはまだ分かりませんが、近藤さんの作品に描かれたしなやかさは見習いたいです。

新天地のお供にエッセイコミック

『ニューヨークで考え中』が描くのは、淡々としながらも、観光客ならきっと見逃すニューヨークの姿。来る前に読んで、滞在し始めると「ああこれ漫画で読んだ」とマンガの世界に入り込んだ気がしました。

「これを読んでニューヨークへ」とはいいません(遠いし、お金かかるし)。でも、旅や引っ越しの前に、旅の途中やその先の生活を楽しくするために、その土地を扱った良質なエッセイやエッセイコミックを読んでいくことは強くお薦めいたします。

WRITTEN by bookish
※「マンガ新聞」に掲載されていたレビューを転載
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