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日本人の5人にひとりが不眠症。眠れない高校生の学校生存戦略『君は放課後インソムニア』

日本人の5人にひとりが不眠症。

日本人の5人にひとりが不眠症と言われています。みなさんはしっかり眠ることができていますか?

厚生労働省の生活習慣病予防のための健康情報サイトe-ヘルスネットでは、不眠症を、「入眠障害・中途覚醒・早朝覚醒・熟眠障害などの睡眠問題が1か月以上続き、日中に倦怠感・意欲低下・集中力低下・食欲低下などの不調が出現する病気」と説明しています。

詳しい症状や対処法などはe-ヘルスネットに詳しくありますので、最近眠れてない方はぜひ参考にされてください。

『君は放課後インソムニア』は、眠ることができない中見丸太(なかみ・がんた)と曲伊咲(まがり・いさき)の高校生2人が、学校の天文台で偶然出会うことから物語が始まります。

高校生にもなれば、一夜漬けで臨む期末試験、好きなひとの事を考えてドキドキしてたら朝になっていたという、眠れない夜のひとつやふたつ経験しているかもしれません。

動画視聴やゲームにはまって貫徹してしまったなんてこともあるでしょう。しかし、インソムニア(=不眠症)は、そのような一過性のものではなく、また、特別な一夜でもありません。

生きていくには十分な睡眠が必要ですから、眠ることができない状態が続けば身体症状が出てきます。穏やかな心で日中を過ごすことは、実は簡単な事ではありません。いつもイライラしていたり、授業中に寝ている高校生も、不眠に悩んでいる可能性があります。

眠れない2人は孤独と秘密を共有する。

主人公の丸太も眠れない夜を過ごす高校生のひとりです。文化祭の準備に追われるなか、昼寝をしているとクラスメートから暇ならダンボールを取ってきてほしいといわれます。

イライラしながらもダンボールを取りに行く丸太は、天文台の扉を開きます。そして、そこで眠っていたのが伊咲です。彼女も丸太と同じインソムニアでした。学校生活のなかで見つけた安全かつ安心・安眠の空間は、眠れない高校生二人にとっての生存戦略の場となっていきます。

丸太はクラスメートからは浮いた存在。伊咲は仲の良い友だちに囲まれています。学校生活のなかで2人が接点を持つことはありません。しかし、この天文台で2人はともにインソムニアである秘密を共有します。

眠れない話に対して、「俺も眠れない」「私も不眠」という浅い共感ではなく、本当に眠ることができないもの同士しかわかり得ない世界の共有が始まります。

眠ろうとしても眠れないまま朝を迎える丸太。明日が不安で眠ることができない伊咲。ほとんどの高校生が眠る時間を孤独に過ごしていたふたりは、眠れない夜の時間を共有しながら、高校生である事や、学校生活に折り合いをつけていきます。

時間つぶし用のスマホが、穏やかなメディアに変わる。

昼間はそれぞれの高校生活を過ごしながら、夕方から朝にかけて2人は放課後の時間をともにしていきます。

天文台という彼らの生存の場は、天文部を設けるという戦略によって担保します。気の進まない学校の研修旅行も、夜半から明け方まで時間をともにする作戦を決行します。

眠れない夜はふたりで家を飛び出してみたり、少しでも相手が眠れるよう2人だけのラジオ配信を始めます。明け方までの時間をつぶすためのスマホが、ふたりの穏やかな関係を作るメディアに変わるシーンは、テクノロジーがインソムニアの高校生を孤立から救っていく象徴として描かれています。

これから先、本作品がどのような展開を迎えるのかはわかりません。しかし、そこに通底するのは、周囲からは普通の高校生と思われているにも関わらず、みんなのように眠ることができない自分への葛藤や苛立ち。眠れない毎日がもたらすやり場のない苦しみ。

そして、インソムニアという共通の悩みを持つ存在によって救われながらも、常に不眠と向き合わざるを得ない苦しさ。丸太と伊咲の表情やセリフが「普通とは何か」をずっと私たちに問いかけてきます。

WRITTEN by 工藤 啓
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