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第1回ホルモン、第2回ホルモン?、第3回ホルモン!!! こってり東村アキコ味のグルメ漫画『いいなりゴハン』

※本記事は、「マンガ新聞」にて過去に掲載されたレビューを転載したものです。(編集部)

【レビュアー/山田義久

 『ママはテンパリスト』で大ブレイク、『かくかくしかじか』でマンガ大賞2015、『主に泣いてます』はドラマ化、『海月姫』は映画化、最近では『東京タラレバ娘』、直近では『ヒモザイル』など次々と話題作を飛ばし、漫画界を牽引する天才、東村アキコさん。

最近ではNHKで放送された浦沢直樹氏の番組「漫勉」でそのすさまじい仕事ぶりを観られた方も多いと思う。

一方で、東村さんは、こう、感性のまま湧き出してくるアイデアを描き続けているうちに、それが売れまくって、また描いて、、というような、いわゆる真性の天才ではない(※)。

というよりも、世の中が欲しているものを鋭く嗅ぎ分け、それ対して、自分の作風や描き方を柔軟に進化させていくスタイルである。よって、自分が成功した要因をある程度言語化できるのが東村さんのすごいところだ。だから他人にも的確なアドバイスができる。

この『いいなりゴハン』の作者、森繁拓真さんは東村さんの実弟である(年の差2つ)。

そして、本作はそんな東村さんのアドバイスにもとづいて、森繁さんが描いた"二人三脚"のグルメ漫画である。

冒頭でこのグルメ漫画が始まった経緯が語られるのだが、どうやらそもそも、作者本人すっ飛ばして、編集者と東村さんとの間で、勝手にグルメレポート的なエッセイ漫画を始めることを合意していたらしい。

もちろん、その背景には東村さんの同じ漫画界で生き抜こうとする弟に対する深慮がある。門外漢の私でも一種の経営戦略として納得させられる内容だ。

一方、編集者側としても東村人気に乗っかれるなら、、、ということで、両者ががっちり手を結び、圧倒的な行動力で実行を進める姉の前に、作者本人(←あまり乗り気でない)は完全においてきぼりとなる。そう、”いいなり”とは姉に”いいなり”ということなのだ。

本作は、一話につき一店に食べに行くのだが、店選びも完全に姉主導で決められる。そして、いきなり大阪・十三にある場末のホルモン屋に送り込まれる。

さすが東村さん厳選の店のチョイスだけあって、最初は乗り気でなかった森繁さんも食事が進むごとに安くてうまいホルモンの味に魅了されていく。本当に美味しそうな食事が並んでいく。

そして、食事の最後には結局姉に感謝することに。このように姉の企画力と行動力に振り回されながらも、全国の美味しいものに下鼓を打っていく、というのが本作の基本型となる。

そして、第2回に選ばれたのもまたホルモン屋!!(今度は渋谷)。今度は東村さん自ら参戦し、ホルモンを絶妙な加減で焼き始める。ホルモンの脂で炎上した場合に備えて氷が入っているレモンサワーを頼むなどの東村さんの小技が惜しげもなく披露される。

そしてちょいちょい挟んでくる東村さんのコメントがまた可愛い。このあたりの細かいエピソードを拾って細かく描写するところに何とも言えない兄弟愛を感じる。

東村さんも読者受けがよく、漫画にしやすそうな絶妙な店選び、そして作中に自ら登場してネタ提供と活躍しまくる(ちなみに各話の最後のページが店紹介だが、それは東村さんがイラストを描いている)。

そう、本作はまさに姉弟の二人三脚なのだ。

さらにさらに、第3回もなんとまたまたホルモン屋!!!(麻布)。

今度はちょっと高級感があるホルモン屋。なんと東村さんがホルモンの焼き方を指導されてしまうほどの手ごわい店だそうだ。

この回は、森繁さんの友人であり、『デトロイト・メタル・シティ』や『みんな!エスパーだよ!』の若杉公徳さんが取材に同行しているのだが、普段寡黙らしい若杉さんがぼそっと呟く感想がホルモン好きにはしびれる。

神のホルモン、食ってみたいよね笑。

そんなこんなで、4回以降(実は第4回もホルモンでてくる)も姉チョイスの店に弟が訪問するという形式は続くが、これがまた安くてうまそうなものばっかり。

曳舟の商店街の焼き鳥、新宿三丁目横丁の海鮮ホルモン(また!)、銀座ガード下の居酒屋レバ刺し、さらに韓国グルメツアーまで、上記3件のホルモン屋含め、すべて訪問した店の店名と住所、電話番号、営業時間も載っているので本作片手に読者もグルメツアーできる。

さぁ、二巻では姉の手を離れた(?)森繁さんの奮闘が始まるがどうなるか。色んな漫画家のゲストも登場しながら、またおもしろい展開になっていく。

グルメ漫画としてでも、最近活躍の東村さんをより深く知るという意味でも、二重に楽しめるこの作品、おススメ!そして、たまたま今日は金曜。これ読んでホルモン食べに夜の街にくりだそう!

(※)この件に関して、『メロポンだし!』4巻の巻末の描き下ろし漫画「未来へのメッセージ~まだ会ったことのない君へ~」が示唆に富む。そこで東村さんが正統な少女漫画の世界でなく、ギャグ漫画で戦うことに至った経緯、そしてそれを今どう捉えているかが詳しく描かれている。漫画で生計立てることを考えている人にいいかも。


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