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テンポの良く進む珠玉のストーリー!可愛さと迫力で満ちた筆致の時代劇『サムライうさぎ』

気づけば、大政奉還から150年以上が経過しております。

士農工商から四民平等となった当初の、身分システムの周辺は問題だらけだったかと思いますが、今の世で身分を気にして生きているひとは、ほとんどいないのではないでしょうか。

ハードルが高ければより燃えるのが恋とはよく聞くもので、したがって身分違いの恋は全世界が大好きなストーリーです。

また、身分違いの恋は往々にして、出てくる恋敵は身分が同等のひとです。
上層であれば、親が決めた婚約者。下層であれば、下町の幼なじみ。そういったものですね。自由恋愛という言葉があること自体が、恋愛が勝手にできなかった証拠だとも思います。

そして、江戸時代を舞台にした『サムライうさぎ』も、自由意志ではなく武士という身分上の理由で、急に夫婦となったふたりから物語は始まります。

身分や体面に縛られた武士の世で、まっすぐに生きるべく夫婦は道場を始める。

主人公は宇田川伍助(うだがわごすけ)という、15歳の御家人です。
突如、妻として志乃(しの)を迎えることになります。

息苦しさを覚えながらも、なんとか武士の世を渡り歩こうと奮闘するのですが、元来の生真面目で曲がれない性格あってか、武家社会から弾かれがちです。

そんな伍助をよそに、志乃は明るく快活に、日々を過ごしています。

最初は「武士たる者かくありき」と義務感に駆られ伍助は右往左往するのですが、志乃の自由な心に触れることで、出世や武士に囚われていた自分に気づき、純粋に剣術を愛せる道場を開こうと決心します。

道場の名は「うさぎ道場」。なぜなら、うさぎは月まで届けと跳ね続ける、努力のアイコンだからです。

随所に仕込まれた小気味よい笑いと、「ここぞ」のかっこよさ。

ストーリーは王道だと思います。名もない道場が成長し、悪意や理不尽に立ち向かう話です。

特筆したいのは、話のテンポと絵の朗らかさです。すべてのコマが、愛嬌に満ちて面白い。

かと思うと厳しい局面が訪れ、登場人物たちの悩み決断するさまに心が打たれます。気づけば、登場人物全員に愛着が湧いています。

残虐な描写がなく、登場人物すべてに愛情があります。和んで笑えて、時々泣ける、稀有で優しいマンガだと思います。

WRITTEN by 竹谷 彰人
※「マンガ新聞」に掲載されていたレビューを転載
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