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人類には、あだち充があればそれでいい。『MIX』

記憶を思い起こすとたぶん最初に心を撃ち抜かれたのは少年ビッグで連載していた『みゆき』だったと思う。

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『みゆき』(あだち充/小学館)1981年発売

『みゆき』には六年ぶりに再会した妹・みゆきと、同級生・みゆきが登場するのだが、妹の方のみゆきがいわゆる“手ブラ”の状態で描かれて少年ビッグの表紙を飾っていた。(ほぼ裸なので表紙のほとんどが肌色)当時の私は小学生。明らかに早すぎた思春期に、可笑しな覚醒を与えてくれたのはあだち充氏(以下、尊敬と親愛をの意を込めて、あえて敬称を略させていただきます。)だった。

それから『タッチ』が始まった。

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『タッチ』(あだち充/小学館)1981年発売

『みゆき』に比べてテーマがよく分からず、野球なのか、ボクシングなのか、ラブコメなのか、もやもやしている中で、主人公・上杉達也(うえすぎ・たつや)の双子の弟であり、もう一人の主人公・上杉和也(うえすぎ・かずや)が死んだ。

心から衝撃を受けた。幼馴染のヒロイン・浅倉南(あさくら・みなみ)のように泣いた。後に作品名がバトンタッチという意味合い(主役交代)から『タッチ』であることに更なる衝撃を覚えた。

その後もあだち充はずっと我々のそばにいた。 『ラフ』『虹色とうがらし』『スローステップ』『H2』、それが水泳だろうとSFだろうとまた野球だろうと、そこには変わらないあだち充がいた。気がつくともう40年以上経っていた。

さすがに“もうあだち充は読めないんじゃあないか?”とか“世の中だって大きく変わってきているし、あの作風もさすがにもう無理だろ?少しは変わったかな?”なんてことを思いながら最新作『MIX』を最新刊15巻まで一気に読んだ。

なんにも変わっていなかった。

今もあだち充はここにいた。

野球×ラブコメ これまでにもあだち充自身の手で何度となく描いてきた、鉄板テーマであるのと同時に、さすがに私個人的にも読者にも飽きられるのでは?という杞憂は一瞬で吹き飛んだ。

あだち充健在。

ムフ♡健在。

一気に青春だったあの頃の記憶が濁流のように押し寄せる。
ガードもへったくれもあったもんじゃあない。

少しくらいは、“こっちだってあの頃とは違って大人になってるわけだし、今読んでもさすがに何も感じることはないかもな”なんて思っていた自分が恥ずかしい。

少年時代となんら変わらずベッドの上で身悶えしながら一気に読んだ。
あー、たまらん。おかげでこっちは丸裸だよ、心が。

逆になんでこんなにも、変わらずに居続けられるのかわからない。ちょいちょい作中に入るメタ表現?(作者自身がひょっこり登場したりして『タッチ』全◯巻発売中!なんてセコイ宣伝入れてくる)もいまだに健在。

なんも変わっとらん、あだち充。

しかし抜群に面白い。その面白さの完成度に敬服する。こりゃいつの時代の子供にも必要なわけだ、あだち充が。いや、大人にも必要だ。あだち充はあの頃となにも変わらずにここにいる。

久しぶりに『MIX』であだち充と再会してその大切さを思い出させてもらいました。

人類には、あだち充があればそれでいい。

少年少女だったあの頃をいとも簡単に思い出させてくれますよ。 あだち充が。

いつ読んでも面白いなぁ。

WRITTEN by 松山 洋
※「マンガ新聞」に掲載されていたレビューを転載
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