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とにかく泣ける『THE 普通の恋人』は、想いと熱量の伝道師・高木ユーナによる「BLを考える漫画」だ

想いと熱量の伝道師・高木ユーナの描く「普通の恋人」

『不死身ラヴァーズ』は恋が叶うとヒロインの存在がリセットされてしまうという、何度も「出会い」と「別れ」を繰り返す作品。何度違う存在として目の前に現れても、「長谷部りの」というひとりのヒロインを愛し続け、振り向かせる。「長谷部りの」が何度も何度も何度も主人公「甲野じゅん」に恋をする姿に私は感動し、涙を浮かべながらこの作品を読んだ。

『銀河は彼女ほどに』では地球を滅亡しに来た地球外生命体である彼女と、彼女を好きで好きでたまらない主人公を凄いテンションで描く。

『ドルメンX』では2.5次元アイドルとファンの姿を想いと熱量MAXで描き、とにかくその世界観に読者を一気に没入させ感動で包み込む。

それが高木ユーナという作家だと私は思う。

そして今回紹介したいのは高木ユーナの新作『THE 普通の恋人』。

ページを開くとそこには男子高校生3人が屋上で駄弁っているという少年漫画などでよく見る一場面。お調子者キャラとクールキャラ、そして、ぶれないリーダー。

そのうちのお調子者キャラの洋介が、2人に「彼女が出来たぜー」と自慢げに報告をするのだが、それを聞いた2人からは思いがけない返答が返ってくる。

「実は俺たち付き合ってるんだ」。

想いと熱量の伝道師、高木ユーナが新作で描いたのはBLだった。

「普通の恋愛ってなんだっけ?」

「普通は女と付き合うんだよ!!!」このセリフを聞いて「それは違う!」と答える人はほぼいないと思います。男は女と付き合う、うん。圧倒的には。しかし実際私たちは「好きな人と付き合っている」のであって女だから付き合ってるわけでも、男だから付き合ってるわけでもない。でも、なんか男同士で付き合うのは普通じゃない気がする。

一般常識? 世間の多数意見?じゃあ、ゲイカップルを笑う人たち、嫌がる人たちは何を笑ったり嫌がったりしてるんだろう。この作品を読んでいるとまっすぐに「普通の恋愛」をしている2人を見ていると真剣にそんなことを考えてしまう。

そして2人の周りの人たちの常識的な反応にも納得してしまう自分がいる事に自己嫌悪をしてしまったり。ふと性別という理由で好きな人と付き合えない事のセツナサを感じたり。色々な感情が溢れてきて大変な事になる。

高木ユーナ先生がこの作品は「BLを考える漫画」とツイッターで呟いていたがその言葉の意味するところはとても深いのかもしれない。

そんなテーマを扱っているわけなのだが、2人の一番近くにいる親友とその彼女の素直でまっすぐな性格に癒され、重いテーマの作品ながらも暗い気持ちになることなく読めるのもこの作品のいいところだろう。

『THE 普通の恋人』は紙の書籍では現段階で発売されておらず、電子書籍のみでの配信となっている。そのため出会い、気づける機会が少ない作品だと思うのだ。本当に読まないでいる事がもったいない1冊なので、気になった方はぜひ一度読んでいただきたい。

WRITTEN by 栗俣 力也

※「マンガ新聞」に掲載されていたレビューを転載
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